シュシュサロンゲストデー 2021.9.17 第4回 井口 雄太さん

井口雄太さん今回は西武新宿線井荻駅に近い老舗の銭湯『井草湯』に伺って、3代目店主、井口雄太さんにお話をお聞きします。2018年にリニューアルされ、お子様連れにやさしい造りに生まれ変わった井草湯には、再建を主導した井口さんの思いが込められています。地域に根付く銭湯を営む井口さんの軌跡をお楽しみください。


ー今日は宜しくお願いします。井口さんは3代目の銭湯の店主ということで、先祖代々ここにずっとお住まいなんですよね?どんな幼少期を過ごされたんでしょうか?
はい、祖父の代からこの地で銭湯を営んでいて、ここで生まれ育ちました。僕は幼稚園児の頃、とにかくお煎餅が大好きで、四六時中お煎餅ばかり食べている子どもでした。ご飯も食べずにお煎餅ばかり食べ続けていたので、親に心配されて病院に連れていかれるという、自分で言うのもなんですが、変な子どもだったんです。それに、これといって子どもの頃に夢見るような憧れの職業や、やりたいことも特に無くて、卒園文集に書かなければならなかった「将来の夢」について書くことができなくて先生を困らせたりしていました。

ー幼い時は誰しも具体的な夢を持っているわけではないと思いますが、煎餅ばかり食べていたというのは…(笑)。幼い頃から家は銭湯を経営されていたんですよね?
そうです、祖父が銭湯を始めて、父が継いでいました。

ーご実家が代々銭湯を経営しているのを見て、幼心に、継がなくちゃいけない、とか、継ぎたくない、とかそんな気持ちはありませんでしたか?
幼少期に父から「お前は銭湯を継ぐんだよ」と言われ続けてきたので…”洗脳”みたいなものでしょうか(笑)、物心ついたときには僕が継ぐんだろうな、という意識は持っていました。

ーご兄弟はいらっしゃいますか?ご兄弟の皆様には銭湯を継ぐプレッシャーは無かったんでしょうか?
僕は3人兄弟の長男で、妹と弟が一人ずついますが、こういうのは長男のさだめというか、妹弟たちにはプレッシャーは無かったはず、と信じています。

ーそれで今、井口さんが継がれているということは…お父様の”洗脳”はうまくいった、ということですね?
そうですね、”洗脳”はうまくいってますね(会場爆笑)。

ー中高生の頃にもなると、家業を継がなければならない人が、継ぎたくないと親に反抗する、なんていう話はよくあることかと思いますが、井口さんは全然無かったんですか?
いわゆる思春期の反抗期はあったと思いますが、銭湯を継ぎたくないとか、親の言うことには従いたくない、という反発心は無かったんです。というのも、うちの父は、朝早く家を出て夜遅く帰ってくるような会社員生活ではなくて、銭湯の仕事で出かけるものの、戻ってきて家にいることも多くて、夜はビールを飲みながらテレビを観ている、というような毎日を送っていたんです。その姿を見ていたので、子どもながらに、なんていい生活だろう、自分もこうなれるなら継ぐのも悪くない、と思っていました。

井口雄太さんーでは今は、お父様のような憧れの生活を送ることができているんですね。
父のような毎日が送れれば、なんて思っていましたが、実際は、今は子どもたちのお世話もあって、日中は忙しくしています。それでも店のことをやりながら仕事終わりにはお酒を飲んで…という生活は送れています。

ーお子さんのお話が出ましたが、井口さんのご家族について教えてください。
我が家には僕と妻と4人の子どもがおりまして、上から小学5年生、3年生、1年生、そして幼稚園の年少の6人家族です。もう毎日が大変です。

ー4人もお子さんがいらっしゃるんですね。
そうですね、子どもは授かりものですが、親戚や両親からは銭湯を継ぐ子がいた方がいいんじゃないか、というようなことは言われたことがありまして…。3人目が長男なので、継いでくれるかな…、と期待はしていますが、まずは僕も父のように、銭湯の仕事を楽しんでいる姿を子どもたちに積極的に見せるようにしています。今日は従業員さんとこんな話をしたよ、とか、面白いお客さんが来たんだよ、なんていう楽しいエピソードを話して、辛い・大変、なんていう愚痴はあまり言わないようにしています。長男が他にやりたいことがあればもちろん違う道を応援しますし、他の子が継いでくれるかもしれませんが、子どもたちがパパの仕事だったらやってみたい!と思ってくれたら嬉しいですね。

ー子育てが仕事と同じぐらいの比重だということは、かなりの”イクメン”ですね!家事の分担もなさっているのでしょうか?
イクメンなんて、そんなことはありません。家では、食事の準備をしたり、洗い物やゴミの片づけをしたり、子どもの宿題を見たり、習い事の送迎をしたりしています。でも家のことで最も忙しくしているのは妻ですから「僕は家事をしています、イクメンです!」なんて言うのはおこがましいです。

ーいえいえ、いろいろと家事をこなされていて、おうちでも頼もしい存在なのではないでしょうか。今は銭湯を継いでご家族の時間も大切にされている井口さんですが、少しさかのぼり、学生時代のお話をお聞かせください。
はい。高校を卒業した後、僕はすぐに銭湯は継がず、専門学校に進みました。この銭湯がある一帯は先祖代々受け継いできた土地なので、不動産関係の勉強をしたいと思ったんです。高校の恩師に相談したら、資格を取ったほうがいいとアドバイスをいただきました。父からも、銭湯を継ぐ前にどこか違うところで社会に揉まれてこい、と言われていたので、不動産関係の仕事に就こうと思いました。そのためには、宅建士(宅地建物取引士)の資格があったほうが良いなと思って。専門学校に進学して、宅建士の資格を取得しました。

ー宅建士は国家資格ですよね?勉強が難しそうな資格だと思いますが。
民法などの法律関係のことが多く試験に出るので、難しいところもありました。勉強はそんなに得意じゃなかったんですが、宅建士の勉強は面白く感じられて、頭に入ってきました。2年間の学校生活でしたが、友人にも恵まれて、勉強は非常に楽しく進められました。

ー宅建士の資格を持っていないと不動産業では働けないのでしょうか?
お客様との契約のときに、契約書の重要事項を説明しますが、それには宅建士の資格が必要です。それと、会社の中で宅建士が何人かいないと不動産業として営業できない資格なので、重宝されている資格です。もちろん、資格を持っていれば就職活動はかなり有利になりますし、資格手当も付きますので、不動産業に就職したい人は是非取得したほうがいい資格と言えます。

ー若くしてすごいですね。それなら卒業後は就職もスムーズに決まったのでしょうか?
そうですね、不動産会社の営業に就職しましたが、やはりスムーズに決まりました。その頃父の体調がすぐれなくて、できるだけ家から近いところで働きたかったので、吉祥寺の会社に勤めました。

ー会社員時代を振り返るとどんな時間でしたか?
入社していろいろと苦労もしましたが、そこでもいい先輩、いい人間関係に恵まれました。営業職の先輩がとてもいい人たちで、「この仕事を辞めたいです」なんて相談をすると、飲みに連れて行ってくれて、何時までも親身になって話を聞いてくれました。そういう面倒見のいい先輩が何人かいてくれて、僕は5年くらい勤めた間で、営業や管理、賃貸や仕入れなどの業務を経験しながら、仕事を覚えていきました。

ー仕事のやりがいや面白さはどんなところにあったのでしょうか?
そうですね、営業をしていたときは、お客様と心を通じ合わせるというか、お客様の相談や悩みを丁寧に聞くことで、人と人とのつながりが感じられました。賃貸や管理の仕事についてもやりがいがありましたね。お客様のご要望を聞いて部屋を探したり、お客様の部屋の壊れたエアコンを確認しに行ったり、修理業者を手配したり、お客様あっての仕事にやりがいを感じていました。

ー不動産会社で5年間社会に揉まれた井口さんですが、もともと5年勤めようと決めていたんですか?いよいよその後銭湯を継ぐんですよね?
5年間、と期限を決めていたわけではありませんでした。でも、父の体調がやはり良くなくて、銭湯の仕事をするのがしんどそうに見えました。ちょうど5年という区切りの年でもあったので、そろそろ家業を継ごうかなと思い、会社を退職しました。

井口雄太さん

受付でお仕事される井口さん

ー継いだ当時はリニューアル前で、お父様が店主ですよね。井口さんは最初はどのような仕事をされたんですか?
今でこそ従業員が23人も居てくれる銭湯ですが、当時は家族だけで経営していて、フロントにいるのは父か母だったんです。そこに僕が入って何時間か勤めたり、開店前の清掃を担当したりしました。

ー今は昔と違ってほとんどの住宅に風呂がありますが、「銭湯」という業種自体は、井口さんが継いだ頃はどんな感じだったのでしょう?
そうですね…、当時から今もですが、銭湯は斜陽産業だと言われていますね。かつては杉並区には100軒くらい銭湯があったらしくて、銭湯を管轄する区内の3つの保健所が30軒くらいずつ銭湯を管理していたので、それはそれは忙しかったと聞いています。それが時代とともにだんだんと減って、僕が関わり始めた当時は30-40軒まで、そして今は19軒しか残っていないんです。周囲からは、先の明るい業種には思えないから、会社員を続けていたほうがいいんじゃないか、なんていう話をされたこともありました。僕は不動産会社を辞めた翌年の26歳のときに結婚しましたが、妻には結婚前に、実家が銭湯を経営していること、そして、僕はそれを継ぐつもりだ、ということを話しました。

ー奥様となる方にも将来について賛同いただいたんですね。その後、お父様から井口さんに経営を任されたんですか?
そうです。銭湯の仕事に関わってから2-3年後には父に代わって僕のほうが主軸になってやっていました。その頃から銭湯組合の会合があると、父ではなく僕が出席していました。

ー「銭湯組合」ですか?
はい。正確には杉並浴場組合です。杉並区の銭湯の経営者が集まる会合なんですが、当時は自分より年配の方々が多く、その中に僕が新たに入ったので、周りから「頑張って成長してくれ!」とか「いずれお前が銭湯業界を背負っていくんだからな!」なんて励まされました。今では僕以外にも若い人はたくさんいるんですよ。有名な銭湯ですが、高円寺にある『小杉湯』さんは3代目の店主が僕とほぼ同い年です。小杉湯はうちのコンセプトとは全く違っていて、古くからの建物を大切にしながら地域の方々と一緒にやってこられた銭湯で、メディアにもよく出られています。銭湯業界が最近少しずつ盛り上がりを見せているんですが、その一端を担っているのは小杉湯だと僕は思っています。

インタビュー会場の様子

インタビューが行われた井草湯2階の休憩所

ー小杉湯は古い建物を守っている銭湯なんですね。井草湯は小杉湯とは違って、建物を新しく建て直されましたが、それを決めた頃のことを教えてください。
うちは老朽化が目立ってきた2015年くらいに、建て替えてリニューアルするか、それともリフォームするかすごく悩みました。銭湯経営は大変だし、無理に続けなくてもいい、井草湯を閉じてしまってもいいよ、と両親は言ってくれましたが、その頃主軸になってやっていた僕がその決定権を持っていました。いろいろと考えて、銭湯を辞めてそれより収益のいいマンションを建設したり、時代のニーズに合わせて高齢者施設や保育園を建てる、なんていう案も出ました。でも銭湯というのは、新規参入するのがすごく難しい業種なんです。そもそも大きい土地が必要ですし、施設としてのあらゆる設備を整えなければなりません。銭湯を開きたいと思う人がいても、簡単には始められないのです。でも僕は、そんな銭湯の家に生まれている。せっかくそういうところに生まれたのならば銭湯を続けたい、と思いました。そして、続けるなら普通の銭湯を作るよりも、何かひとつのことに特化して、そこに魅力を感じた方々が集ってくださればいいなと思いました。そこで、子育ての経験がリニューアルのコンセプトにつながりました。まだリニューアル前のことですが、うちの銭湯によく子どもたち3人を連れて行ったんです。でも、上の子を洗ってあげている間に下の子が走り回って、濡れた床で滑って転ぶんですよ。思いっきり転んで、後頭部を打ったこともあって、周りのお客さんに心配されました。子ども1人、2人ならまだしも、3人銭湯に連れていくのは本当に大変でした。それで、子どもを連れて行きやすい銭湯ってどこにあるんだろうと考えたんですが、なかなか無いんです。そんなことがあって、老朽化した建物をリニューアルすると決まったときに、ただ新しく建て直すだけではなくて、コンセプトとして、「子どもを3人連れて行っても安心できる銭湯」だったら良いんじゃないかと思ったんです。

ーなるほど!子ども3人は、たしかに大変ですよね。銭湯をリニューアルすると決めた後はどんな準備をされたんでしょう?
開業までは3年ほどかかりました。まずは、銭湯の建物を解体しました。さらに、銭湯の裏にはアパートがあって、お住まいの方々がいらしたんですが、そのアパートも取り壊さなければならなかったので、頭を下げて立ち退きをお願いしました。それがもう本当に大変で。住人の皆様の引っ越し先を探したり、引っ越しにかかる費用を見積もったり、物件の良し悪しを専門的に説明したりと、不動産会社に勤めた経験が、そのときにすごく役に立ちました。親身になって相談を受けてくれる不動産屋さんの存在も知っていたので、手伝っていただきました。

ー具体的には何十軒ぐらいの立ち退きを交渉しなければならなかったんでしょうか?
30軒近くです。最初、5-6軒くらい平行に交渉を進めてみましたが、すぐにそれは無理だと気づいて、途中からは知り合いの不動産屋さんにも交渉に加わっていただきました。

ーすごい数交渉されたんですね。お聞きしづらい話ですが、立ち退きをお願いする立場としては、莫大な費用を負担されたのではないでしょうか。
そうですね。立ち退き交渉をしていた時期は、人生で一番辛かったように思います。僕はもともと夜はよく眠れるタイプなんですが、妻から「うなされていたよ」と言われたことも何度かありました。多額の費用がかかったこと自体は、そんなに心の負担になったわけではないんです。新しいスタートを切るためですので、そこは希望でもあります。でも、立ち退き交渉は、こちらの希望を叶えるために勝手なお願いをお住まいの方々に押し付けているだけのように思えてしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら進めることが辛かったです。あれはもうやりたくないですね…。

ー大変な状況からのスタートだったんですね。では、”希望”の方に関して、準備でワクワクするお話をお聞かせください。
銭湯を建てる時、どんな銭湯を造るかは、設計士さんに相談するのですが、何社かある中で、あまり他の銭湯では見ないような動線の造りを設計してくださったところを選びました。子どもと一緒に行きたい銭湯を造りたいんです!と言ったら、こういうのはどうでしょう、ああいうのはどうでしょう、といろいろ提案してくださいました。

ー今インタビューしている休憩所や隣接するキッズルームの柔らかい床も、子どもが転んだときに大事に至らないよう、設計の配慮を感じます。
まさにそうです。柔らかいフローリングに関しては設計士さんの提案で、ファミレスなどを一緒に見に行って、造りを参考にさせてもらって設計に取り入れていただきました。この休憩所も、この広さなら何ができるかアドバイスをいただきながら構想を練りました。

井草湯キッズルーム

井草湯2階休憩所隣のキッズルーム

ーこんなふうに2階に休憩所があるというのは銭湯としては一般的なのでしょうか?
いや、こういう造りの銭湯はあまりないと思います。キッズルームがある銭湯はあるとは思いますが、おそらく都内ではめずらしいのではないでしょうか。今はコロナ禍なので、キッズルームはお休みさせていただいてますが、通常でしたらマットを敷いていて、おもちゃがあって、DVDが観られるように完備しています。休憩所のほうはテーブルと椅子をご用意しているので、風呂上がりに1階で販売しているビールやアイスを召し上がっていただきながら、ガラス越しにお子様が遊んでいる姿を見られるようにしています。以前、オープンと同時にいらした親子が、風呂上がりにこの休憩所で2人でお昼寝されていました。ちょうどその時は他のお客様もいなくて、20-30分くらい休まれているところでしたが、こちらも親子がゆっくりと寛いでいただけている姿を拝見して、この部屋を造ってよかったなぁと思いました。他のお客様がいらっしゃるときはぐっすりお昼寝されてしまうとちょっと難しいのですが…(笑)

ー温泉に行くと、お風呂上がりに気持ちよさそうに寝ている人、いますよね(笑)。そういうふうに過ごしていても許されるんでしょうか?休憩所の利用ルールなどはありますか?
リニューアル当初は休憩所のご利用に関して、特に規制をしなかったんですが、あるとき、ご家族総出でお弁当を持っていらして、休憩所で食べてからお風呂へ、そして上がってからまたお弁当をつまみに、お酒を飲んでいらっしゃるお客様がおりました。ご家族で楽しくご利用いただいているのは嬉しい反面、お弁当は匂いが出てしまって、せっかく風呂に入って休まれている他のお客様のご迷惑になってしまいますので、ご遠慮いただきたいですね。もちろん、こちらで販売している飲み物やお菓子を召し上がっていただくくらいなら問題ありませんが。

ー特に今はコロナ禍で誰もが衛生管理に気を付けている状況ですから、飲食のルールも必要ですね。でも、コンセプト通り、まさに家族で寛ぎたくなる銭湯なのでしょうね。リニューアル前に比べて、家族連れは増えましたか?
そうですね、以前の銭湯とはだいぶ変わりました。まず、以前は平日の利用客が1日100人程度だったのが今は200人前後、休日になるともう少し多いくらいです。コロナ禍になってから入場制限をしていますが、リニューアル後でコロナ禍以前はお子様だけでも多いときは100人もいらしてくださいました。常連になっていただいているお子様もいらっしゃいます。学校のお友達とたまたまここで会うと、子どもって凄くテンションが上がるんですよ(笑)。親御さん同士も普段はあまり接点が無さそうでも、風呂上がりに一緒にビールを飲んで会話をしたりして。そんな地域の拠り所として井草湯を活用していただいて、ありがたいな、と感じています。(写真スクロールの下に続きます)

  • 井草湯外観

    井草湯 外観

  • 井草湯のお風呂

    井草湯 お風呂

  • 女湯のこども風呂

    こども風呂(女湯)”ししおどし”のしかけが楽しい

  • ししおどし
  • 赤ちゃんや子ども用の風呂いす

    赤ちゃんや子ども用の風呂いす

  • シルキーバス

    シルキーバス

  • 女湯の洗い場

    女湯の洗い場 奥には露天風呂

  • 男湯の洗い場は重厚な雰囲気

  • 男湯のサウナ 木の香りが漂う

  • 水風呂

    サウナから水風呂の動線が簡潔!

  • 男湯の子ども風呂や椅子

    男湯にも子ども風呂やいすがある

 

ーお子様にも大人気の井草湯のお風呂の特徴やおすすめどころを教えてください。
うちは子どもと一緒に入れることがコンセプトの銭湯ですので、おむつが外れていないお子様でも入っていただけます。男湯にも女湯にも、大人の目が行き届く場所に、少し温度が低めの子ども風呂を設けています。楽しく入れるようにししおどしの仕掛けなんかも取り付けているんですよ。できる限り小さいお子様も入りやすいように、ベビー用のバスチェアやシャンプーなども置いていますが、他にも必要な物があれば、すぐそこの西松屋さん(杉並井荻早稲田通り店)で調達してきます!(会場爆笑)
お子様と銭湯デビューしたいと思ったときに是非ご利用ください。コロナの感染状況が落ち着いたらご家族で来ていただいて、風呂上がりにビールやアイスを食べて、帰ったら寝るだけ、なんて良いかと思います。

ー本当にお子様にやさしい銭湯ですね。地域の子育て世帯の方々にはありがたい場所ですね。井草湯には、ファミリー層以外に、若い世代や、遠方から来られる方はいらっしゃるんでしょうか?
もちろんいらっしゃいます。遠方からご足労いただけるのは本当に感謝しかありません。でも、遠くにお住まいの方々にまで魅力を感じていただける銭湯というよりは、地域の皆様に愛される銭湯を目指しています。普段の生活で、今日はお風呂掃除が面倒だな、疲れているな、なんていう日に、利用していただければ嬉しいです。

井口雄太さんー私も先日、井草湯のお風呂に入らせていただきましたが、お風呂にはお子さん用のアンパンマンの椅子やベビーバスチェアがあったので、赤ちゃんを横に寝かせながら、自分もシャワーやお風呂に入れる造りなんだと実感しました。赤ちゃん用のみならず、きちんと大人用のシャンプーやボディーソープもあって、手にタオルを持っていくくらいでも入れそうだな、と思いました。
タオルもレンタルしているので、入浴セットを持っていなくてもお金さえ持ってきていただければ入れますよ!

ーそれならば気が向いたら立ち寄れますね!井草湯は今後どのように展開していくお考えでしょうか?
そうですね、まずは、いつも清潔なお風呂をご提供し続けること。そして、地域の皆さまが集まれる場所として、いつまでもこの場所にあり続けること。この2つを守り続けた上で、もともと銭湯は男性のお客様が多いところですので、今後は女性がもっと利用しやすい銭湯を目指したいです。例えば、今はサウナ室が男湯にしか無いので、男女を入れ替えにしたり、レディースデーをもうけて、全館を女性に開放したり、そういうことを考えています。それもこれも、コロナの感染状況が落ち着いてからですが。

ーそういうアイデアはどこから湧くのでしょう?
自分から湧いてくるというよりは、まずは他の銭湯がやっていらっしゃることを真似させてもらったり、アイデアをもらったりしています。それに、うちは従業員にも恵まれていて、それぞれの立場で感じていることや意見を聞いて、それを参考にして企画に反映させています。

ー事前の打ち合わせでは「地に足をつけた生活をしたい」という言葉をいただいていました。銭湯がどんどん減っているこのご時世、銭湯をやめて別事業に鞍替えすることもできたはずなのに、あえて銭湯を引き継いだ使命感というか責任感を井口さんから感じます。幼い頃は、将来の夢もない子だったのに、今はこんなに地域に必要とされる方となった井口さんから、進路に悩む若い世代へメッセージをお願いします。
僕は中高生のときは何も考えずに毎日遊び歩いているような子どもでした。それでも、責任を持って仕事ができる、ある程度の人間にはなれました。若いうちは興味があるものにはどんどん手を出して、合わないものは辞めて、というのを繰り返しているうちに、好きなことを見つけられるんじゃないかな、と思っています。逆に、興味を持ったり好きになれるものがないまま進んでいって、仕事に就くこともあるかもしれません。でも、頑張って続けていると、だんだんとその仕事の面白いところが見えて、興味を持ち始めたり、好きになることってあると思うんです。だから、たとえやりたいと思えないまま始めたことでも、自分にとって良いなと思えるところを見つける努力をする、ということは大事だと思います。

ー仕事を始めたからといって責任感が生まれるというわけではないかと思いますが、井口さんが仕事に対して責任感を持つようになったのはどんなきっかけだったんですか?
僕は、不動産会社にいたときに、上司に「一週間でいいから、今までやったことがないくらい死ぬ気で取り組んでみろ!」と言われたことがありました。就職してから何年か経っていて、役職もついた頃でしたが、仕事が上手くいかなくて辞めようかなと思っていたときに言われた言葉なんです。どうせもうすぐ(銭湯を継ぐから)仕事は辞めるんだし…、という生半可な気持ちで仕事をこなしていたときにかけられた言葉だったので、ハッとして、死ぬ気で、というか、一生懸命仕事に取り組みました。それがきっかけで、仕事を受け持つ責任について、意識が変わったような気がします。

ーでは、今も死ぬ気で銭湯を経営されて…?
今は…うーん、死ぬ気ではやっていません(笑)!今は銭湯の仕事自体は従業員みんなに支えられていて、僕の仕事はみんなが働きやすい環境を整えることなんです。それって、いろいろなことをやらなければならなくて、僕が一つのことに特化して死ぬ気で取りんでしまうと、周りが見えなくなって、全体の動きに影響が出てしまうので、俯瞰できるように、ゆったりと構えて仕事をしています。でも責任を持って仕事を進めています。

ー今日はお話をありがとうございました。井草湯がこれからも地域に根ざした銭湯として皆様に愛され続けますよう願っております。
【観客の皆様からの質問】
ー井草湯のすぐ隣にあるオーケー(スーパーマーケットのオーケー下井草店)さんは、井草湯さんが誘致したと噂で聞きました。大型スーパーが近くにあるのは、ありがたいです。
実はそうなんです。もともとこの井草湯一帯がうちの先祖からの土地で、リニューアルのときに井草湯の建物の位置を少し端に寄せて、環八沿いにまとまったスペースができたので、そこに誘致しました。入浴もお買い物も生活の一環なので、お風呂に入るついでにお買い物もできたらこの地域の方々にとって良いかな、と思いました。僕はオーケーが好きで、以前は鷺宮店によく行っていたんですよ!安くて品物も良くて、助かります(笑)

ーリニューアルで、子連れの家族にはとても入りやすい銭湯に変わったと思いますが、昔ながらの常連さんからは、リニューアルについてこんな銭湯にしてほしい、とリクエストは上がらなかったのでしょうか?
具体的に設備を希望されたり、希望のお風呂のコンセプトをお話される常連さんもいらっしゃいましたが、とにかく、銭湯をやめないでほしい、続けてほしい、ということはお願いされました。取り壊して新しく建て直すまでの間、本当に銭湯が再建されるのかどうかを心配される常連さんもたくさんいらっしゃって、「井草湯建設予定地」という建築のための看板を立ててはいたものの、「そんなこと言って、実はマンションを建てるんじゃないの?」なんて言われたこともありました。銭湯が次々と閉鎖されている昨今ですので、そう思うのも無理ありませんが、本当に必要とされているんだと感じる出来事でした。

ー銭湯の中のことについてお尋ねします。ベビーチェアがあるというお話でしたが、男湯にもありますか?うちの子は男の子なので、パパと入れれば良いなと思いました。
男湯はサウナ室がある分、女湯よりもスペースが少なくて、常時ベビーチェアを置いているわけではありません。幼児用の椅子と、幼児用のボディーソープ、リンスインシャンプーは常時置いてあります。でも、来ていただいたときに女湯でベビーチェアが使われていなければ、男湯に移すことは可能ですし、お客様からのニーズがたくさんあれば購入を検討します!


井草湯外観井草湯公式Twitter
杉並区下井草5-3-15 Google Map
Tel:03-6913-7226
営業時間:14:30-22:30(22:00最終入場)
定休日:毎週月曜日
入浴料金:大人¥480/小人¥180(小学生)/幼児・未就学児¥80
サウナ(男湯のみ):¥440(貸出フェイス・バスタオル付)
 

▼以下のサイトでも井草湯の情報が詳しくご覧いただけます
すぎなみ銭湯
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